《MUMEI》
運命
里菜も、なんの抵抗もなく、自分の事が、ゆっくりと口から出てきた。
里菜は、青森の漁師町でそだった。
海に近い家で、なんの不自由もなく、普通の家庭に。
しかし、いつからだろうか?
そんな普通がたまらなく、嫌になっていた。
そんなある日、突然母親から、告げられた。
「私たち離婚するの。。。」
「あなたには、どっちにくるか、好きな方を選んでほしい。」
あまりに、突然だった。
ごくごく普通の家族。親。しかし、ふたりには、里菜が知らない間に、小さな、無数の亀裂が、走っていた。
里菜は、決める事などできなかった・・・。
それから、里菜は一人で海を眺める日がつづいた。
普通が退屈だった。
しかし、その普通が突然壊れた。
何もないこの町で、何もないどころか、ごくごく当たり前のものさえ、うしなった。
海を眺めながら、里菜は思った。。
「ここを、出よう。」
特別な、ビジョンなんて、何もない。
でも、普通さえ手に入らないこの町を、出て。
東京へ。
何かをみつけよう!
居場所を探そう!
里菜は、高校卒業と同時に、東京へとむかった。
しかし、里菜も、田舎育ちのため、タクミ同様、東京に打ちのめされた。
人の多さ。
無機質なビル群。
灰色の街。
期待など、影をひそめ、不安ばかりが、顔をのぞかせた。
女が一人で、やっていくには、甘くはなかった。
何かを探すどころか、あてもなく、もってきたお金も底をつく。
夢どころか、現実に倒れた。
毎日、街をさまよった。
何もないものか、ブラックホールに吸い寄せられるかのように、歌舞伎町へと。
とても、さみしかった。
里菜も同様、大勢の中の、一人に、故郷にいるときの、何倍も孤独を感じていた。
何より一番の淋しさは、癒してくれる、海、が近くにないことだった。
都会に飲まれ、現実の壁に阻まれ、次第に心が凍っていった。
そんな中、歌舞伎町を、なんの目的もなく歩いていた、里菜に、男か声をかけてきた。
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