《MUMEI》
中学生のキス
「ねぇ、キスの味ってあるのかなぁ?」

「…無い、と思うケド」

少し夢見がちなアタシの親友は、少女マンガ雑誌を見ながらぽや〜としている。

昼休み、学校の中庭でお互いに読書をしていた。

彼女はマンガ雑誌を、アタシは数学の参考書を読んでいたのだが…。

「昔はレモン味だって言われてたのよねぇ。甘酸っぱいって」

「レモンはフツーに酸っぱいじゃない」

「んもー! 全然夢が無いわね」

「あってどーする? 実際そうじゃなかった時の落胆が激しいだけでしょ?」

「夢が無いなんてサビシイわねぇ」

「余計なお世話よ。それより現実逃避はよくないわよ」

そう言ってアタシは自分が見ていた参考書を振った。

「高校受験は夢では何ともならないわよ」

「ううっ…。それは夢も見られないのぃ」

青い顔で遠ざかる親友。…やっぱり逃げてたか。

「アタシと同じ学校を目指すのは諦めたら?」

「え〜、イヤっ!」

「イヤってねぇ。実力が無いんだから、きっぱり諦めた方が良いじゃない」

「ひどっ…!」

「酷くない」

あっさり言い放ち、マンガ雑誌を取り上げる。

「恋愛なんて二の次にしなさいよ。高校に入ったら、いくらでも出来るでしょう?」

「…出来ないもん」

「何でよ? 中学よりも高校の恋愛の方が盛り上がるんじゃないの?」

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