《MUMEI》
道化師
女として生まれて17年間、わたしは真面目に生きてきた。

真面目なのが1番。

おかげで友人も多いし、両親や先生方の信頼も厚い。

勉強だって、スポーツだって得意になれる。

ヘタに目立ったって、良いことなんてない。

その性格のせいか、何故かピエロが大嫌いだった。

キッカケは本でピエロの存在を知ってから。

ストーリーはよく覚えていないけれど、笑われるだけの存在だというところに、嫌悪を覚えた。

それからはテレビで見るのもダメ。

言葉として見たり聞いたりするのもダメになった。

なのに…ここ最近、私の住む街ではピエロのウワサが流れている。

深夜遅くになると、ピエロが街の中に現れる。

陽気な歌を歌いながら。

…ところがそのピエロを見た者は、殺されるらしい。

ピエロは草刈鎌を両手に持っており、見た者を襲い掛かるという。

その話を警察に勤めている父から聞いた時、全身に悪寒が走った。

薄気味悪いっ…!

しかし警察がいくら巡回しても、ピエロは見つからない。

とび抜けた運動神経を持っているらしく、見かけても素早い動きに誰も追いつけない。

物騒なことが続く中、街にはサーカス団が訪れた。

あまりのタイミングのよさに、警察は目をつけた。

ところがそのサーカス団には、ピエロという存在はいなかった。

団員達もいないことを説明し、ここに来る前の地域にも確認は取れたらしい。

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