《MUMEI》 なのでサーカス団は、1ヵ月この街で営業する許可を得た。 元々娯楽の少ない街だったので、サーカス団はあっという間に人気が出た。 でもわたしはキライ…というか、苦手だった。 ピエロがいなくても、サーカスという存在も何となく…。 だけど不思議なことも起こった。 ピエロが発見されなくなったのだ。 安心できる反面、サーカス団が怪しくなった。 やっぱりピエロとサーカスという存在は、つながっているのだろうか? モヤモヤした気分が、心を占める。 そんなある日。 父が気分転換に、家族でサーカスを見に行こうと言い出した。 最近ピエロが現れないので、ほっとしたのだろう。 でもわたしはイヤだと言えなかった。 父のことを尊敬していたし、父がわたしを大切に思っているのを知っているからだ。 しぶしぶ見に行った。 サーカスは人気の理由が分かるほど、素晴らしい技術を披露してくれた。 けれど…わたしの心は晴れない。 やがて若い青年が、最後の挨拶に出てきた。 彼は団長らしい。 もうすぐ一ヶ月が終わることを、心寂しいと言っていた。 だけど…。 「それでも新たな団員を迎えられそうなので、とても嬉しいです」 と、笑顔で言った。 前へ |次へ |
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