《MUMEI》 …本当は苦痛だった。真面目に生きることが。 勉強も運動も、人付き合いにもウンザリしていた。 そのストレスが、わたし自身が1番嫌悪しているピエロに変身させたんだった。 急にスッと頭が冴えた。 わたしは真っ直ぐに団長を見つめた。 「―それで? わたしに何の用なの?」 「もちろん、あなたを我がサーカス団にお迎えしたいと思っています。我がサーカス団には、残念ながらまだピエロと言う存在がありません。ぜひ、ウチへ来ていただけませんか?」 わたしは腕を組み、ため息をついた。 「殺人犯であるピエロを?」 「ええ! 何せ我がサーカス団員達は、そのものの存在にしかなれぬ者達しか集まりません。あなたもしかり、ですよ?」 ―なるほど。一理ある。 ピエロであるわたしは、ピエロになれる。 狂気を強く持っているから。 ―翌日、街からサーカス団が消えた。 そして同じく一人の少女が失踪し、ピエロも街に現れなくなった。 やがて、街から遠く離れた土地で、サーカス団は営業を始めた。 そこにはピエロの姿もあった。 2本の鎌を操り、滑稽な演技をするピエロは、たちまちサーカス団の人気者になった。 しかし殺人事件は起きない。 自分の居場所と、本当の姿を見つけたピエロは、もう孤独じゃない。 だから安心して、ピエロになれる。 わたしは。 ―あなたは、どう? 前へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |