《MUMEI》
in the train
沢山の人々でごった返す、朝の電車内。

ラッシュもピークを迎え、駅に停車する度、ドッと人達が乗り込んできて、今や呼吸をするのも困難な程、殺人的に込み合っている。
その上、夏という季節柄、乗客のほとんどが滝のように汗を流しているので、車内は異様に湿度が高く、空気もよどんでいた。

…最悪だなァ。

平均より背が低めな真尋は、周りの乗客に押し潰されないよう、腕で人々の背中を押しやり、自分が立っていられるくらいのスペースを懸命に確保する。

ガタン…ガタン…と規則的に揺れる電車の振動を全身で感じながら、真尋は自分の腕時計をチラリと眺め見た。

学校の最寄り駅に到着するのは、あと15分程。

サウナ状態の車内で、今しばらくジッとしていなければならないこの現状に、毎日のことながらウンザリした。

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