《MUMEI》

サラリーマンの手は、真尋の怒りに気づかないようで、未だ股間の辺りをモゾモゾと蠢いている。

真尋はフツフツと腹の底から激しい感情が込み上げてくるのを感じた。

………我慢ならねーッ!!

下卑た行為に耐えられず、真尋は勢いよく振り返りながら、「おい、オッサン!?」と、大声をあげた、

その直後だった。

「いい加減にしなッ!!」

真尋の声を凌ぐ大きな声が車内に響いた。
それと同時に真尋の身体をまさぐっていたサラリーマンの手が、フッと遠退く。
さらに、「イテテッ!」と、すぐ背後から男の情けない声が聞こえてきた。

………え?

真尋は驚いて、後ろの様子を伺い、

そして、たまげた。

背後にいるサラリーマンの、その隣に、彼の手を捻りあげている、若い女の姿が目に入ったのだ。

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