《MUMEI》

本城はシャオの手を取りそのまま裏口へ
だが其処にも追手はやはり居て
本城は溜息混じりに肩を落として見せながら
「……ジャマするなら、殺すよ」
相手を睨め付けてやり、言って終りに脚を蹴って回す
脚先に何かを蹴り付けた感触
そして何かが倒れる音だけが鳴った
「……この程度の蹴りも避けられないワケ?不様だね」
脚元に転がる相手を見下しながら嘲る言葉
おまけに、と更に蹴りを一撃食らわせその場から逃げ出す
「基、何所に行くの?」
本城に手を引かれたまま、取り敢えず走る事をするシャオからの問い
だがその問いに、今は明確な答えなど返してやれる筈もなく
「さぁ、何処だろうね」
曖昧なそれしか、返してはやれなかった
一体何所へ逃げるのが得策か
考え始める本城の横顔を暫く眺めた後
「……基、こっち」
シャオが腕を引く
行く当てでもあるのか、本城はシャオに手を引かれるがままについて歩く
そして着いたソコは
「……ここ、何?」
随分と寂れ、すでに閉じてしまっている遊園地だった
こんな処に何があるのかと訝しむ本城へ
シャオはソレでも可愛らしい笑みを本城へと浮かべて見せる
「此処は、シャオの好きだった場所。シャオの思い出の場所」
だから遊ぼう、、と子供の様にはしゃぐ事を始め
本城の腕を引いていた
「もしかして、遊んで行く気?」
「駄目?」
窘める様な本城へシャオからの訴える視線
どうにもこの手に弱いらしい本城は溜息をつきながら辺りを見回した
「電気が全く通ってない。これじゃ何にも乗れないよ」
「それでもいい。それでもいいから……!」
子供の様な駄々を言い始めるシャオ
訴える様な眼で見上げられてしまえば
否とは流石の本城でさえも言えなくなってしまう
「……仕方ないね」
肩を揺らして見せたのが返事の代わり
シャオは本城へと満面の笑みを浮かべると
本城の手を取ったままま、走り始めた
「ちょっ……。シャオ!」
いきなりに引っ張られたと思えば
シャオは本城の手を取ったまま、まるで踊るような足取り
楽しげなそのシャオの様に、本城は微かに笑う声を上げる
声を押し殺す様に笑う本城を見ながら、その内にシャオもつられて笑う事を始めていた
広すぎる其処に広がる、たった二人の笑う声そんな穏やかな空気に気を緩ませた
次の瞬間
辺り一面の電気が一斉に付き始めていた
突然の事に本城は自身の背後へとシャオを庇い入れる
「……いい加減しつこいね。ボス」
ソレを後光にと現れた人影
段々と近づいてくるソレは、すぐその正体を明かす
「……基さん、これが最後通告です。(Fairy tail)を渡して下さい」
努めて穏やかに話を始めた相手へ
本城は、だが微かに嘲笑を浮かべる
「相変わらず、甘過ぎるよ。ボス」
「基さん?」
「僕は前に言った筈だ。これを取り返したかったら」
態々此処で言葉を区切り、本城は懐からいつの間にか取り出した銃を相手へと突き付けながら
「僕を、殺す気でおいでって」
嘲笑を浮かべて見せた
互いが互いに無言で対峙し、そして
「……あなたとあの少女を連れ帰る。それが俺の、俺たちの今成すべき仕事です」
「へぇ。随分と仕事熱心なんだ。関心するよ」
無意味な問答が淡々と続いていく
「……今、これ以上の会話は無意味です。基さん」
どうやら先に痺れを切らしたのは相手不意に周りへと目配せをすれば
現れた黒服の群れが本城達を取り囲んでいた
「だから、あなたを殺す気で、捕まえさせて貰います!」
その声をまるで合図に
黒服の群れが一斉に本城へと向かってくる
多勢に無勢
一斉に掛かってくるそれらを、だが本城はさして慌てることもなく
瞬間に腰を低く落とし、
群れる黒服、その全ての脚を払ってやった
「……やはりあなたは一筋縄ではいきませんね」
無様に倒れ込むその群れを見下しながら
相手の視線が徐にシャオの方へ
同時に銃口が向けられていた
「……何の真似?」
一体何をするつもりかと訝しむ本城へ
相手は銃口を向けたまま
「……僕も彼女を傷つける事は本意じゃない。だから基さん」
戻って来てほしい、との懇願に
本城は益々訝しげな顔をしてみせる

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