《MUMEI》

周りの関心に気づいた女は、掴んでいたサラリーマンの手を皆に見えるように掲げて、「ハイ、注目〜!!」と、声を張り上げた。

「この人、チカンでーす!この子の身体をベタベタ厭らしく触りまくってましたー!!」

言いながら、真尋のことを指差した。

…ゲッ!?

思いがけない女のカミングアウトに、真尋は頬がひきつるのを感じた。

痴漢行為はもちろん嫌だったが、それによって注目を浴びるのはもっと嫌だった。

男が男に痴漢していた…というシュチュエーションが余計に気持ち悪いし、さらに、自分で痴漢を怒鳴り付けるのではなく、他の人…しかも女の人に助けて貰った…というこの状況は、いち男子として如何なものか。

…つか、カッコ悪すぎだろ、俺!

自分のあまりの情けなさに、そう心の中で毒づき、軽い目眩を覚えた。

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