《MUMEI》
1人
今日は歩雪くんと1回も話さなかったなぁ。
っていうかもう放課後だし。
今宵は鞄に教科書類を詰めると、小さく溜息をついた。
自分が悪いんだけどね。
「おっせーなぁ歩雪!!まだ担任に捕まってんのかよ。あいつノート出しに行っただけだろ?」
「しょうがないじゃない。どうせあの担任、しょうもないことベラベラと喋ってんのよ」
紘と秋葉は呆れながら話している。
2人は椅子に腰掛けているので、歩雪が戻るのを待つつもりらしい。
2人が待ってるなら、良いよね。
「じゃあ、また明日ね!!」
「は!?」
今宵の言葉に、紘と秋葉は驚いたように聞き返した。
「何言ってんのよ!!歩雪くん待たないの?」
「そうだよ!!どうしたんだよ今宵ちゃん!!」
「ん。2人が待っててくれるでしょ?」
1人で帰るのは寂しい。
けど、歩雪くんは琴吹くん達が待っててくれるから。
「じゃあ、またね!!」
今宵は鞄を引っ掴み、教室から駆け出す。
「ちょ、雪村!?」
「今宵ちゃん!!」
戸惑う2人の声に背を向けて。
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