《MUMEI》

「だーいじょうぶだって!」


豪田や他のチームメイトが、
次々に明るい言葉を浴びせて来る。


慰めて、元気付けようとしているのは分かっている。


だけど…。


俺はイラッと来た。


「お前らに俺の何が分かるんだ?」


そしてあろうことか、
俺はチームメイトに向かって冷たい言葉を言い放っていた。


その場は一瞬で静かになる。


俺はハッと息を飲んだ。


「ご、ごめん。

今のは忘れてくれ。」


慌ててスポーツバック、
バット、グローブを抱えると、
逃げるようにベンチを飛び出した。


何やってんだよ俺。


また騒ぎ出したベンチに背を向け、
速足で駐輪場へ向かう。


アイツらを巻き込むのだけは避けたい。


そう思いながら、
近くにあった石ころを右足で蹴った。


石ころは駐輪場の前にいる誰かの靴に当たった。


「あ、すみま……!!!?」


謝ろうとして顔を上げた時だった。

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