《MUMEI》

う、嘘だろ?


目の前にいる人が誰だか分かった途端、
後退りしていた。


冷や汗が流れ、首筋を伝う。


その人はゆっくりと振り返った。


夕陽のせいで逆光となり、
顔は見えない。


だけど俺には分かる。


長身で、黒髪のオールバックに黒のスーツ。


昔と全く変わらない。


「久し振りだな、蓮翔。」


「!」


声色もそのままだ。


「何の用ですか?」


緊張していたのか、
出たのはか細い声。


相手はフッと笑を漏らすと、


「またお前を鍛えに来た。」


俺とは対象に昔と全く変わらない、
の太く、低い声で言った。


「そ…んなこと……。」


「出来る訳ないと言いたいんだろう?」


俺はその問いに首を縦に振った。


「今日で解かれたんだ。

そしてそのままここに来た。


挨拶だけでもしようと思っていたが、
もう練習終わっていたみたいだな。」


「どうして…?」


「どうしてって?」


相手はまたフッと笑を漏らした。


「決まっているじゃないか。


理想の選手を育てるためだよ。」

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