《MUMEI》

俺の瞳を逃すまいと、
相手はしっかりと俺を見据える。


「今度は失敗しないから。

残っている奴等にも伝えといて。」


そう言い残して、
手を上げながら去って行く。


俺は相手が後ろを向いて歩き出すと、
膝立ちの状態になった。


そして両手を地面に着く。


カラカラとバットが転がって行く音が聞こえたが、
今はそんなことに気を向ける余裕など無かった。


「どうしたら良いんだよ!!」


颯ちゃんや賢ちゃんの一件がまだ片付いていないのに……。


親父は病気で、
そしてそのことで気を落としている母さんを支えないといけないのに…。


いきなりの奴の登場。


言い様の無い不安と苛立ちが押し寄せて来る。


「どうしたら…どうしたら良いんだ!!」


俺はまた膝立ちの状態になって叫んだ。


どんよりとした紫色の曇が、
何かを暗示させるように流れていた。

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