《MUMEI》

「桐海?」


ビクッと肩を震わせて、
後ろを向いた。


「神道……。」


そこには神道が驚いて立っていた。


「何があったんだ?」


転がり落ちていた、
俺のバットを拾い上げながら問う。


「ありがとう……。

いや…その……。」


立ち上がってバットを受け取った。


だが、先程のことを神道に言っていいのか収拾がつかず、
口ごもってしまう。


「最近のお前、疲れてないか?

言いたくないならそれでもいいが、
荷は軽くした方が身のためだぞ。」


普段、冷静な神道が珍しく心配そうな目付きで俺の顔を覗き込んだ。


そう…だよな……。


俺は肝心なとこで、
チームメイトを信用していなかったのかも知れない。


俺は顔を上げて、神道と視線を合わせた。


「来たんだ、さっき…。

沙河谷(サガタニ)コーチが……。」

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