《MUMEI》

…警察が連絡?

彼女の言う通り、このサラリーマンを鉄道警察につきだして事情聴取を受ければ、間違いなく学校へ連絡が行く。生徒が痴漢の被害に遭ったから、話を聞いているとか何とか伝えるのだろう。そうなれば遅刻にならず、公欠扱いになるのだ。

…だが、

それと同時に、学校中に知れ渡るのだ。

自分が『男に痴漢されたのだ』、と。

そんな情けない展開は死んでも嫌だった。

「そんなの困るよ!」

たまらず叫んだ真尋に、女は眉間にシワを寄せた。

「何が困るのよ?」

「何って…空気読めよ!」

「はぁ?意味わかんない」

そんな感じで言い合っているうちに、電車がホームに滑り込み、完全に停車すると、勢いよくドアが開く。
それと同時に沢山の人が乗り降りした。

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