《MUMEI》

 
うたた寝をしていた斎藤アラタの様子が急変した。
呼吸が乱れ、震えている。
「先生、斎藤君が!」
若菜は直ぐさま異変に気が付く。



「大丈夫です」
アラタの白い肌は血の気が失せ真っ青になっている。


「無理するな、貧血か?」
クラスがざわめいた。
本人の意志とは関係なく、保健室へ強制送還となる。

机に手を付いてよろめく姿に思わず樹は後ろから支えてしまう。
無言でアラタが睨む。


「高柳そのまま連れていけ」教師の指示に何か言おうとしていたが、抵抗する力も入らないようでアラタは諦めて樹に身を委ねた。



初めて触れた屋上での衝撃が走る。
指先が
    痺れる。



記憶が      精神が     体が



    止まる。

    乱れる。



樹はアラタは瞼を閉じた。
平静を装う。互いに探られないように意識していた。

木漏れ日に包まれるイメージを浮かべながら、雑念を消す。
心を世界を遮断する。

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