《MUMEI》
紅き焔
世界には天、地、風がある。
天は精霊―
地は人類―
風は獣が支配する。


その均衡は絶対で、決して破る事の許されぬもの。


しかし、かつて…1度だけ破られたことがある。





人類が精霊や獣が持つ"不死"の力を欲したからだ。
禁断の果実に触れたものは、もう、元には戻れない。
人類は精霊と獣を迫害し、対立してしまったのだ。
冷戦中ともとれる、永い長い年月を経て、人類はとうとう動いた。




しかし、有限の力と生命しか持たぬ人類に、戦う術は無かったのだ。無知であったがゆえに世界は均衡をくずしてしまった。精霊はその長"精霊王 デュラ"を、獣は百獣の王"グレン"を筆頭に、人類を破滅に追いやっていった。





その時、1人の若い女が現れた。
名はリアン、どの街にも1人はいそうな、花売りだ。
人々は彼女を無謀だと嘲笑い、世界のためにと兵器の作成に躍起になっていたのに対して、彼女は…

唄をうたった。
響(おと)を世界に響かせた。

ただそれだけだった。




彼女の家は貧しく、教養も貧しかった。それでも並外れた感性を持ち、心が豊かだった彼女の唄は素晴らしかった。



獣の動きを止め、精霊が唄に耳を傾けている。



人々は唖然とした。



こんな唄が、どんな兵器にも劣らない、人類が持つ最高で最強の兵器だと知ったのは、それから間もなくのことだ。













また…リアンは紅き焔を身体から発する能力者だった。
その明々と揺らめく焔が、獣の怒りを沈め、獣は彼女に、自分達と話せる"秦器"を与えた。
そして、精霊王とリアンが対峙した時、彼は彼女に問うた。
「人間を生かす理由はなんだ?」
「私には家族がいます。私はただ、家族を守りたいのです」
リアンの、真摯な態度と揺るがない心の豊かさに驚きを覚えたデュラは、彼女に"唄"を使って精霊と対話する権利を与えた。







この後、リアンの意思により作られたのは【音術士】と【獣幻士】の職。
秦器――――楽器を使うのが獣幻士、
唄―――心の唄を使うのが音術士。
どちらも精霊と獣と対話する術を、世に残すためのリアンの考えだった。
リアンはこう言い残している。




『世界が生まれるとき、私達は有限の命を貰った。
限りあるものだからこそ、私達の命は輝いてる…獣よりも、精霊よりも。
私達は欲より、心を大切にしなければならない。
清らかな、純粋な心こそが、人類最大の武器になる』

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