《MUMEI》

そのままキスをする。

甘く柔らかい感触。

彼女の可愛さが、唇の感触に表れているようだ。

一瞬だけで、すぐに離れた。

「…これでよろしいですか?」

「〜〜〜っ!」

彼女は耳まで真っ赤になって、口を手で覆った。

私は唇に付いたグロスを指で擦った。

「グロス、落ちちゃいましたね。今、拭くものを…」

「ちょっ…待ちなさい!」

ぐいっと腕を引かれ、私は顔だけ振り返った。

「はい?」

「何でっ、キスしたの?」

「…命令でしたし」

「命令なら何だってきくの?」

「アナタならば、何だってききます」

「ならっ…!」

彼女はそこで言葉を止めた。

彼女には珍しく、言うことを躊躇っているようだった。

「…どんなお願いだってきいてくれるのよね?」

「ええ」

「それなら、アタシを愛しなさい」

顔を真っ赤にしながらも、真剣な表情で命令をしてきた。

ああ…美しい。

大輪の赤いバラのような彼女の命令ならば。

私は彼女の手を取り、膝をついた。

「はい、姫さま。永久に愛を誓います」

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