《MUMEI》

「な、ここ…」

「席開いててよかったな〜」

店員に促された席は偶然前と同じ場所。日高はキョロキョロしながら恐る恐る席につく。
メニュー表開くとやっぱり昼間と金額が違った。

日高はそれを覗き込みながら

「高すぎだぞ?なあ俺あんまり…」

「勉強頑張ったご褒美に奢ってやるよ、気が引けるなら考査の結果で返せ」

そう言いながらメニュー表を日高に向けてやると、凄く嬉しそうに日高は笑った。


あーコイツ…

クシャって笑うと可愛いのな。
うん、誠は笑顔の可愛い子に昔から弱いからな。
そうかそうか、これですか。
「なにじっと見てんだよ佐伯…」

「へへ…、日高可愛いなって思って」

「な!何言ってんだよ!誰が見ても可愛い佐伯に言われたくねーし!」

日高は耳まで真っ赤にして照れながら、俺の手をバチンバチン叩いてくる。


結局俺達は、生ビールとアンチョビの石窯焼きピザ、シンプルリゾットを頼んだ。





チ〜ン!


「「お疲れ様」」


「「プハッ!」」


「久しぶりの生ビールうますぎだよ〜!」
「だな、うまいな佐伯!ごちそうさまですっ!」

「はーピザも美味いし!それにしても誠見かけねーな」

さっきから通り掛かる店員の中に誠はいない。
たまに立ち上がってキョロキョロするんだけどやっぱり見かけない。
「な、やっぱり店員に言おうよ、せっかくだし働いてる誠に会いたいだろ?」

「…いいよ、迷惑かけたくないもん」

「何健気な事言ってんの!次店員通り掛かったら俺聞くからな」

日高は本当は誠に会いたいんだ。ほら、だからそれ以上は駄々こねないで俯いた。

俺だったら間違いなく店員取っ捕まえて仕事放り出して来て貰うけど…。
いや、わかんないや、同じ立場だったらやっぱり気い使って声かけらんねーのかな。

「あー、何だよ日高!、前髪にリゾットつけてる」

「え?リゾット?」

日高は人差し指で前髪を触るが

「違う、取れてない取ってやるよ」

「あ〜もう酔っ払ったのかな〜」

俺は身を乗り出して前髪に触れる。

「あ、顔に移った、じっとして…」

「ん」

日高は俺が取りやすい様に瞼を閉じた。

俺は綺麗に取ってやりたくてもっと日高に近付く。


「何してんだよ聖!いくら聖でもそれ以上やったら殺すぞ」

「「え?」」




やっと現れた誠はコック服だった。
日高を見ると、マジで嬉しそうに誠を見上げ…

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