《MUMEI》 *. ―――ふと、空を見上げた。 どこまでも澄みきった青空が、俺の頭上に広がっている。時折、優しい風が俺の髪を撫でては通り過ぎていく。 視界の端に映る、火葬場の建物からまっすぐ伸びる煙突。そこから、細く白い煙が、そのきれいな空へ向かって、ユラユラと立ち上っていくのが見えた。 心の奥底にまで染み入るような、 あのセルリアンブルーの、その彼方に、 君は、消えてしまったのか。 信じられない気持ちでいっぱいだった。 君が、俺達が生きるこの世界から、跡形もなく消え去ってしまったなんて。 俺は火がついた煙草を口にくわえると、息をするのと同時に煙を肺へ一気に送り込む。喉が焼けるようなそのイガラっぽさに、眉をしかめながら勢いよく煙を吐き出した。 …なぜ、君を救えなかったのだろう。 …なぜ、俺は君の傍に居てあげなかったのだろう。 …なぜ、君とちゃんと向き合わなかったのだろう。 たくさんの『なぜ』が、頭の中を駆け巡り、反響する。 それが無意味だと、判っていても。 . 次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |