《MUMEI》 1「ふ……ふぅぅううぁぁああうあぅぁあっ」 不意に生まれた欠伸を噛み殺すのに苦戦しながら、フリースのポケットに突っ込んであったケータイを取り出す。 今は真夜中。バックライトに浮かび上がるデジタル表示はちょうど2時に変わった。 胸いっぱいに冷たい空気を吸い込む。 空気がウマイなんて1ミクロンすら感じないが、排ガスを垂れ流す車やバイクが走ってない分、昼間よりはいくらかマシなような気がする。ため息を付くように深く吐き出した息が、夜闇の奥へと白く溶けていった。 珍しく、シン――ッと静まり返った夜の街。 空はガスッたように薄ボンヤリと濁り、瞬く星はまばら。欠けた満月も朧に浮かんでいる。 その下をのんべんだらりと歩く俺の手首には、一番小さいコンビニ袋。 暇に明かせて、たったの5時間立ち読みしたら、店員だか店長だかの、すだれケツあご背あぶらチャッチャ、とんこつ面のほくろ毛オヤジが必要以上に向けてくる、絶対零度の熱視線と、掃除する振りをして近付いて来ては投げ付ける、聞こえよがしの高速舌打ちに、仕方なく、しっっかぁぁぁたなく帰り際に買った『うまい棒――からし明太子味』が中に一本。 ――――俺……ひょっとしたら、出禁食らうんじゃなかろうか? 閉じたり開いたり手の中で玩んでいたケータイをもう一度見ると、あれからたったの4分過ぎただけ。閉じたケータイを元あったフリースのポケットに無造作に突っ込む。 明日はサボろう。どうせ行っても授業なんてつまんねぇし。 そんな事をちらりと考えていると、ひゅ〜〜っと冷たい風が背後から首筋を撫でて通り過ぎる。 「うぉっっ!!さむっ!?」 3月も半ばを過ぎて、随分と暖かくなってきたかと思ったが、夜は流石にまだ寒い。 風邪引く前に、とっとと帰ってさっさと寝よう。 そうと決まれば、こんな寒空の下でノタクラしてるのも馬鹿馬鹿しい。 そこの公園を突っ切って、早いトコ布団に潜り込んで惰眠をむさぼるとでもするか。 次へ |
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