《MUMEI》

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 ドゴゥゥゥゥゥゥンンンンン…………


 衝撃波が鼓膜を揺さぶってキーーーンと甲高い音が脳内に鳴り響く。初めて聞く爆音と爆風が背中と好奇心を叩く。誘惑に任せて振り返れば道路の表面は粉々に砕け、爆心地からはモウモウと煙が立ち昇っていた。

「……すげぇ…………初めて見た…………」

 反動を相殺するため後方に塩水を飛散させる特徴から、カールグスタフはカールグスタフでも閉所でもより安全に使えるAT−4CS型だと解った。

「ちっ、逃げられてもぅたか……」

 ヘルメット越しのくぐもった声が忌々しげに呟くと、担いだAT−4CSを投げ捨てて、バイクを操りテールを回す。

「乗り。安全な場所まで連れてったんで」

 流れに取り残されて、ただの傍観者になってた俺は、その言葉にはっと我に返ると、慌てて誰とも解らない男が差し出したリアシートに飛び乗った。

「振り落とされんよう、しっかり捕まっときや」

「うわっ!!」

 関西なまりの強い言葉が終わるのを待たずに、前輪が勢いよく持ち上がりゴムの焦げた臭いを撒き散らしながら急発進する。思わずしがみついた腰が思いの外細かった。

 真夜中の国道を爆音を鳴り響かせながらバイクは街中とは思えないスピードで右へ左へ蛇行しながら走り続け、その度にリアシートから振り落とされるんじゃないかと生きた心地がしなかった。

 そして膝が地面に擦れそうな位左へ傾いた時、身体が地面に吸い込まれていくような感覚に襲われて、生命の危機を直感じた俺は、目の前の腰にさらに強くしがみついた。

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