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《MUMEI》 . むにゅぅ 手のひらが掴む柔らかい感触。 「っぅきゃぁぁぁっっ!!」 悲鳴――。 「へ？」 溶けたバターのように後ろへと流れていた景色が、前触れも無くスロー再生される。音の無い世界で、天地がゆっくりと逆になって街並みが時計回りに回転していく。その視界の端に道路を火花を散らしながら削っていくバイクと、転がる男？の姿が映った。 ――――あぁ。 やっぱ俺、ここで死ぬんだ―――― 本日二度目の走馬灯が脳内を駆け抜ける。一回目程しっかりした物では無く、何故か朝食べた豆腐の味噌汁が浮かんでいた。 ボフッッ 固いアスファルトの地面にぶつかって削られて全身血ダルマになるんだと半ば諦めていた俺の身体は、以外にも軟らかな塊の中に突っ込んでいた。 助かったと思った瞬間、ぷ～～～んと生臭いにおいが、鼻の穴を攻撃してくる。 「うわっ！臭っ!!イタッ!?」 幸か不幸か俺はゴミの山に突っ込んだらしい。想像すらしたくもない、色んなゴミが絶妙にブレンドされ鼻がひん曲がりそうな悪臭から逃れようとするが、流石に無傷とはいかなかったらしく、身体中が痛くて上手く動 けない。 それでもどうにかこうにかそこから這い出すと、目の前に現れた二本の足。 ドゴオオォォォォンン ンンン………… ついさっきまで乗っていたバイクが、ぶつかったガードレールを巻き込んでド派手に燃え上がる。 そのゆらゆらと揺れる炎の朱色の光を右半身に浴びて、全身黒ずくめのバイクの男？が仁王立ちで俺を見下ろしている。 そして―― 前へ |次へ |
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