《MUMEI》

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 ドゴンッッ


 握った拳を俺の脳天に振り下ろした。

「ごぁっ……!?」

「いきなりドコ触っとんねん!このエロガキィッ!!」

 怒鳴りながらヘルメットを脱ぐ。

 現れたのはどことなく猫を連想させる、二十歳位の赤毛のショートヘアの女の顔。頬を上気させ怒った顔がちょっと可愛い……

「折角、助けたろ思て後ろ乗せたったのに、何や?この時と場所を考えやん、無分別極まり無いサカりっぷりは?あんたはアレか?オナニー教えたら死ぬまで止まらへんエテ公か?」

 ……訂正。口が悪過ぎて全っっ然可愛くない。

「誰がエテ公だ!誰がっ!大体そんな格好で、こっちはお前が女だったなんて、これっっぽちも解んなかったんだぞ!」

「なんやて?この『浪速の綾瀬はるか』て呼ばれてるウチを捕まえてそないな暴言吐くんか!」

「ぅっわ……自分の事、綾瀬はるかとか言ってるよ……」

「何でここでリアクションがドン引きやねん!ここは『どこが綾瀬はるかやねーーん!』ってツッコミ入れる所やろ!」

「入れねーよ。漫才師じゃねぇんだから……」

「何言うとるん?ボケとツッコミは紳士淑女のたしなみなんやで!」

「紳士淑女のって……。どこの貴族様がたしなむんだよ、ボケとツッコミを」

「山田ルイ53世」

「誰だよそれ?」

「うっわ……髭男爵てもう忘れ去られてるんか?ホンマあかんなぁ、最近の芸人は。賞味期限が短すぎるで…………」

「うぜぇ…………」

 見上げる女は最近の芸人事情だか何だかを延々と垂れ流し始める。

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