《MUMEI》

たかと思えば…


「…ンッ…」


「ひ、日高あ?」
突然泣きだした日高。ボロボロと涙を見せたかと思えばテーブルに突っ伏した。

「あ、ああ、俺なんもしてねーよ」

「…分かってるよ、さっきの冗談だし…つかちょっと真依借りるよ」

「…うん、頼む」


誠は日高の肩を抱いて消えた。


そして数秒もしないうちに店内はゆっくりと薄暗くなり、カウントダウンの合図が聞こえた。


今年も終わる。


つかなんか、貢と付き合いだしてからあっという間に年末が来たかんじ。


『♪♪♪♪』


ディスプレイには貢の名前。


「すげ。俺今かけようとして携帯取ったとこ」


『本当?…今年最後と来年始めにどうしても聖ちゃんの声聞きたくてさ』


……。


「声じゃやだ、会いたいよ、早く帰ってきて貢、寂しい…」

あ…、日高の俺移っちゃった。

でも本当に離れてみてわかったんだ。


傍に居て貰えない寂しさ、切なさが。



『……、うん、俺ももう限界、朝一で帰る。




……聖、愛してる』


「俺も、早く会いたいよー…」


離れてみなきゃわからない、本当に大切な事は何なのかは。

俺達は言葉もなく、電話は繋がったまま、暫くお互いの存在を感じあっていた。

携帯を切って、カウントダウンが終わり、そして新年が開けた。







年が開けて何分かしたらやっと、私服姿になった誠と日高が照れ臭そうに戻ってきた。


もう日高は笑っていた。またクシャって笑った。


俺も同じ位早く笑いたいな。


誠も同じ位幸せそうに笑って、


ありがとうな、今年もよろしくって言った。









END

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