《MUMEI》

「ヤメッ!?イデデデデ……デ……?あれ?痛くない?」

 確かめるように自分の足で立ち上がり、軽く身体を動かしてみる。痛みが全く無くなったワケじゃないが、これくらいならどうって事はない。

 これがこの紙切れの力なのか?

 額から垂れ下がる紙切れを指先でつまみ上げる。上目遣いに見ると、表面が透けてミミズがのたくったような難しい文字と紋様が書いてあるような気がするが、この角度からじゃ今一つ分からない。もう少し光にかざせれば…………

 あっ、取れた。

「言っとくけど札の持つ呪の効果で痛みをまぎらわせとるだけやさかい、取ったらまた痛なんで……って、何でそこで取るん?」

「そう言うことはもっと早く言ってくれ……」

 脂汗を垂らし、苦行のような痛みに必死に耐える。貼られる前より痛くなったんじゃないのか、これ?

「最後まで人の話聞かへん方が悪いんやろ。もっかい身体に貼っ付けたったら効果はあるさかい、とっととしぃ」

 言われて自分の襟口を引っ張って広げると、手の平には少し余る位の長さの、縦長の札を胸元に貼り付ける。すると気を失う事も出来ない位痛かった身体が、別の身体にすげ替えたかのようにすぅっと楽になった。

「取り敢えずだましだまし3日位なら動けるはずやけど、その後はエライ目ぇに会うで」

「偉い目?」

「ちゃう!エライ目ぇ……大変な事になるっちゅうんや」

「例えば?」

「散らしてた痛みが倍返しで来るとかかな。

 今やと、そうやな……貼っ付けてたのと同じ時間、白鳳と朝青龍のガチンコのぶちかましに挟まれる位?」

「っざっけんなっっ!そんなもん耐えられるか!!」

「ほんならここに転がって鬼に喰われる?」

「それもヤだ!」

「じゃあ死ぬ程痛ても死ぬよりマシな方選んだ方がええやろ?」

「……解ったよ。で?何をどうするんだ?」

「先ずは場所を変えんで。付いてきぃ!」

 再び走り出す女の後を付いて走る。

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