《MUMEI》
出会い
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俺―――片倉 修平(カタクラ シュウヘイ)が、澤井 風子(サワイ フウコ)と初めて出会ったのは、15歳の春。

高校に入学して、間もなくのことだった。

これから始まる新しい学校生活に期待に胸を膨らませていた頃、偶然、彼女と同じクラスになった。
初めて、教室で風子を見たとき、

『なんてキレイな子だろう』と、そう、思った。


パッチリとした大きな目を縁取る、長く繊細な睫毛。スッと通った鼻筋。白い肌に栄える、肩下まで伸ばした艶やかな黒髪。無駄な肉のない、華奢な体つき。

整った顔立ちは勿論だが、それよりも、彼女が纏うその空気が何ともミステリアスで、落ち着いていて、どうしても同い年には思えない程、大人っぽく見えた。

当然、風子は男子から持て囃され、学年一…いや、学校一の美少女として人気を博した。


そんな人気者の風子と、至って平凡な俺が仲良くなったのは、単に生徒番号が近くて席が隣だったから…それだけだ。

その後も『10年来の友人』として、彼女の傍に居られた俺は、本当に運が良かったのだと思う。


風子は自分の外見を鼻に掛けるようなことはせず、どんな部類の人とも気さくに話が出来る、明るく素敵な心の持ち主だった。

いつしか俺は、風子とその友達の松島 晶子(マツシマ アキコ)とつるむことが多くなった。

休み時間も放課後も、暇さえあれば俺達3人はいつも一緒にいた。
落ち合う場所は、決まって校舎の屋上。普段は危険回避の為、屋上へ出られるドアは施錠されていたが、俺達が通っていた3年間は、その鍵が壊れていて、自由に出られるようになっていた。


屋上に座り込み、澄み渡る青空を仰ぎながら、俺達は様々な話をした。


学校のこと。家族のこと。将来のこと…。


誰もが一度は仲間達と繰り広げるような、他愛のない話をしては、3人で笑い合っていた。


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