《MUMEI》 「そうか……で?アンタの名前は?」 「出来れば言いたくない……」 「何言うてんの!アンタは名前も知らん人間の事を信用出来るんか?」 「そりゃ、出来ねぇけど……」 「なら、さっさと名乗りぃな」 「……笑うなよ」 「笑わへん」 「絶対だぞ」 「しつこいで!」 「………………キムラタクヤ」 「…………あぁっ! フリ作ったからって無理してボケやんでいいんやで。そんなん全然面白ん無いから」 「ボケてなんかねぇっ! 俺の名前は正真正銘、一文字違いの、木村 拓弥なんだっ!!」 「ボケ無し?」 「ボケ無し!」 「マジで??」 「マジで!!」 「………………ぷっ」 俺の言葉に俯いて肩を震わせていた麗の堰が決壊する。 「あぁーーーははははっっ。キム、キムラッ、タクヤって。ごっつ名前負けしとるやんか、ひぃーーーひひひっ。あ、あかん。おな、お腹痛いっ。ひぃっ!つ、吊るっ……苦ひぃっ……」 「だからヤだったんだよ!」 腹を抱えて崩れ落ち、床をビシバシ叩きながら、ひとしきり笑い続けた麗が、目尻の涙を拭いながら起き上がる。 「所で天津木村」 「誰だよそれっ!!」 「最近チョコットだけ売れてるお笑い芸人」 「知らねぇよ!」 「じゃあキムタク」 「ふざけんなっ!」 「もぅ、わがままやなぁ」 「うっせぇバカ!うっせぇバカ!普通に呼べよ!!普通に呼べばいいんだよっ!!」 「ったく……そんならタクヤ、何か知りたい事あったんとちゃうんか?」 「っそうだよ!何なんだよ!何が起こってるんだよ、これは!?化け物に追い掛けられるわ、バイクで事故るわ。全部知ってんだろっ?なら教えてくれよっ!!」 前へ |次へ |
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