《MUMEI》 「影っ!縛っ!」 麗の声が暗闇の中から、その行動を待っていたと言わんばかりのタイミングで飛んで来る。 すると足元の黒い円が、闇色の光という形容の仕方が一番しっくりくる不気味な光を放ち、何本もの黒い色をした紐みたいな触手を産み出すと、それらが一斉に内側――つまり俺に向かって襲いかかって来た。 「ぅえぇっっ!?」 とっさに跳んで逃げようとするが、それよりも早くうねうねと生きているように触手が足に絡み付くと、その途端、足は根を張ったように動かなくなる。 「うわっ。何だよこれ!?動け、動けよっ!!」 必死にもがくが触手のせいで足は微動しかしてくれない。――と、背筋に悪寒が走る。 ふしゅうううぅぅぅぅぅ…………。 生ゴミの臭いが、ツンッと鼻の奥に突き刺さる。 ハッとして振り返ると、巨大な手を振り上げた鬼の姿が! 殺られるっ――――! 反射的に目を閉じ頭を抱え、身を丸くする。 「よっしゃ、今やっ! 結っっ!」 突然、五色の光が目蓋を貫く。 るるるぐぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!! 絶叫が頭上から落ちてくる。見上げると、赤、白、黒、青、黄の五つの光が色鮮やかに、病的なまでに青い肌の巨体を絡み付き、締め付けていた。 「タクヤッ!間抜け面ぶら下げとらんと、早よこっちに来る!!」 声に振り向くと、数枚の紙切れを手に麗が鬼に向かって身構えている。 「何言ってんだ!動けなくしたのはテメェだろうがっ!!」 「ンなもんとっくのとおに解いてあるわ!邪魔や!!早よ退き!」 「うっせぇバカ!うっせぇバカ!頼まれたってこんなトコに居たかねぇっつぅのっ!」 俺は麗の言葉通り足が自由に動く事を確認すると、不規則な動きを規則的に行う五色の光の中から転がるように逃げ出した。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |