《MUMEI》
バレンタインのキス
「う〜む…。何が良いんだろうな」

わたしはお菓子の本を見ながら、思わず眉をしかめる。

わたしには恋人がいる。

その…同性の、女の子の恋人だが。

家が隣同士の幼馴染で、告白は彼女の方からだった。

わたしのように引っ込み思案で固い性格とは違い、彼女は明るく奔放だった。

彼女のおかげで、わたしは一人にならずに済んだ。

だから彼女から告白された時も、嬉しかった。

男女問わず人気がある彼女が、わたしのことを1番好きだって言ってくれたことが…。

恋人になって最初のバレンタイン。

毎年、何かしらチョコレート菓子を作ってあげてはいたけれど、恋人ともなればまた話は別!

本屋でバレンタイン特集のお菓子の本を買って、家に帰って熟読するも…何にしたらいいか、迷いっぱなしだ。

…いっそ本人に直接聞いてみようか?

「いや、それじゃあサプライズというものがなくて、アイツはイヤがるだろうな…」

何事もハデ好きだし。

とは言え、長い付き合いのせいか、ほとんどのお菓子は作ってしまった。

クッキー、マシュマロ、ケーキ、プリン…チョコが付くお菓子はほとんど作り尽くしてしまったのがイタイ。

「いっそ和がからんだのが良いかな」

最近の流行だし、アイツは甘い物なら何でも好きだしなぁ。

ああ、とっとと決めて材料を早く買いに行かなくちゃ。

それにラッピングも。

…手間隙かかるけど、心が躍る。

素直に楽しいと思える。

しかし、悩みもある。

それは…。

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