《MUMEI》 「いやー、まいったねぇ。こんなに貰っちゃった♪」 …コイツは本当にモテる。 だからバレンタインも、たくさんチョコを貰うんだ、毎年。 せっかくわたしの部屋に呼び出したのに、彼女の持ってきた荷物は他の人から貰ったチョコがたくさん。 「あっ相変わらずスゴイな。食べ過ぎるなよ?」 「分かってるって。でも呼び出されて貰うのはめんどくさいけどさ、送りつけてくるってのも厄介だよねぇ。荷物受け取るのに、家にいなきゃなんないしさ」 「…あっ、そ。じゃ、もう帰ったら?」 「わあっ! ウソウソ! 家には家族がいるから、大丈夫! ねっ、それよりさ」 スススッとわたしにすり寄って来る。 「アンタからのチョコは?」 「コレだけあるんだから、いらないんじゃないか?」 「わぁん! イジワル言わないでよぉ。今日、アンタのチョコを1番最初に食べようと思って、何にも食べてないんだから」 「…それって朝食抜いてきたってことか?」 「うん、そう」 涙目で訴えかけてくる彼女を見て、思わずため息がもれた。 「分かった。ちょっと待ってろ」 「うん♪ 待ってる」 彼女を部屋に残し、わたしは台所へ向かった。 …いざ作ってみると、結構難しかった今年のチョコ。 それでも食わせないワケにはいかないだろう。 深呼吸をして、お盆に乗せて部屋に戻った。 「おっお待たせ」 「うん! 今年のバレンタインは何?」 キラキラと輝く笑顔の彼女の前に、わたしは置いた。 「今年はチョコ大福に挑戦してみたんだ。大福も好きだろう?」 「うっれしー! もちろん、アタシはアンタの作るものなら何だって好きだって」 満面の笑顔でそう言うと、彼女はとっとと食べはじめていた。 3つも作ったのに、あっという間に食べて、食後の抹茶ミルクを美味しそうにすすっている。 前へ |次へ |
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