《MUMEI》

相変わらず良い食べっぷりだ。

「今年も美味しいバレンタイン、ありがとね」

「はいはい。…そう言えば、お前からは?」

「あっ、ちゃんと用意してあるよ」

そう言ってバックの中から、小さな包みを取り出した。

「はい、コレ。美味しいって評判の店から買ったの」

「ありがとな」

ラッピングが小さいながらもキレイで可愛い。

彼女は流行に敏感だから、きっと美味しいところのをわざわざ買って来てくれたんだろう。

彼女はあんまり料理が得意じゃないから。

「ねっねっ、開けて見てよ」

「分かった分かった」

ラッピングを傷付けないように、そっと丁寧に開けた。

5個入りのチョコレートだ。

「わあ、可愛い!」

バラの花を模したチョコは、真っ白から黒いチョコが色を変えて並んでいる。

「コレ、味によって色が変わってるんだ。白いのがホワイトチョコ、黒いのがビターチョコ」

「じゃあ真ん中がミルクかな?」

茶色のバラを掴んで食べてみると、甘くも舌触りの良いチョコが溶けた。

カカオの良い匂いが、口の中いっぱいに広がる。

「うん、美味しい! ありがとな」

笑顔で言うと、彼女は照れた笑みを浮かべた。

「えへへ。アタシはアンタと違って、手先器用じゃないからさ。美味しい店探すの、苦労したよ」

「こっちだって作るの苦労したさ。和の洋菓子なんて、はじめて作ったし」

「でもスッゴイ美味しかった。やっぱり愛情がたっぷりだからかな?」

「なっ! …しっ知るか! そんなの」

そっぽを向くけど、顔が赤くなるのは隠せない。

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