《MUMEI》

中に入って、本棚の後ろを引っ張って、引き戸を隠します。

そして引き戸も閉めて、わたしは物の隙間に隠れました。

「ふふっ。ここなら絶対見つからない!」

気付きにくい物置部屋の中にある、本棚の後ろに隠れている部屋。

例え長年ここにいる先生だって、気付かないでしょう。

隠れてても小さな校舎なので、少しだけみんなの声が聞こえます。

耳を澄ませると、はしゃいだ声やビックリした声が聞こえてきます。

楽しそうな声に、思わずわたしも笑顔になります。

でも部屋の中は静かなので、みんなの声に耳を傾けながら、うとうとしてきました。

…が、突然の大声に、わたしは目を覚ましました。

きゃーっ!

うわああ!

「えっ?」

悲鳴に似た声に、体が固まります。

でも思い出しました。

先生の中には、生徒を驚かせて喜ぶ人がいることを。

きっとその先生が、見つけた生徒達を驚かせているのでしょう。

わたしも何度か驚かされたことがあるので、あんな声を出したことがあります。

ここには窓もないので、外の様子は分かりません。

けど腕時計を見ると、始まりから20分しか経っていませんでした。

先生が降参の声を出すのは、かくれんぼが始まって1時間後と決まっています。

1時間経ったら出てくること、かくれんぼのルールです。

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