《MUMEI》

「大人のお姉さんたちを誘うなんて、
いい度胸じゃない。」


「はい!?」


質問の意味、すり違えてないか?!


「あなた、桐海蓮翔君でしょう?」


「なんで知ってるんだ?」


「あら、巷(チマタ)では有名人よ。

それにアレだけテレビで騒がれてるんだもの。

気付かないはずがないわ。」


顎に手を掛けて、上目遣いで俺に近寄って来る看護婦さん達。


何故か命の危険を感じた。


「あ、あの!

俺親父の病名聞きに来ただけですから!」


その瞬間、看護婦さん達の足がピタリと止まる。


「親父って……ああ、桐海哲司(キリカイテツジ)さん?」


俺は激しく縦に頷く。


「そうねぇ。

でもそんなことより、
この後私と付き合ってくれない?」


「は?」


「いや、私とよ!」


「いや、私よ!」


何がそんなことだ…。


「話を逸らすんじゃねぇ!」

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