《MUMEI》

 だが、それでもひとつだけ、どうしても確認しておきたい事が俺の中で頭をもたげている。これを聞いておかなきゃ、おちおち安心も出来やしない。

「なぁ、鬼ってどうなったんだ?倒せたのか?」

「ん?これの事?」

 手にした青い玉を俺にも見えるように掲げて見せる。そう言えば鬼の居た場所にその玉が転がってたんだっけか。

「そんなガラス玉の事じゃなくて鬼だよ、鬼」

「ガラス玉て……、せやからさっきの鬼がこれなんやて」

 馬鹿な事を言う。

「あんなデカブツがどうしてそんな小さくなるって言うんだよ?」

 小馬鹿にしたように鼻で笑ってみせると、麗はそれに輪を掛けた薄ら嗤いを浮かべて、俺の鼻先にその玉を突き付ける。

「よう見てみぃ」

 言われるがままじっくり中を覗き込む。

 色は気持ち悪い位、淀んだ青一色で、どろどろとした液体のように中で蠢いている。それが薄皮のように透明なガラスの膜に覆われ、どことなくイクラなんかの魚の卵を連想させる構造になっていた。

「これがどうしたって…………うわぁっっ!!」

 玉から麗へと視線を移そうとした瞬間、玉に苦痛にのたうち回る極悪な顔が映り込む。いや、そうじゃない。玉の中で極悪な鬼の顔が苦痛に歪みのたうち回っている。

「な…何だよこれは!?」

「せやから言うたやろ。さっきの鬼。それをこの封玉に封じ込めたんや」

「封じ込めたって、倒したんじゃないのか!?」

「倒すて、そんな勿体無いコトせえへんよ!」

「勿体無いっ??」

「そうや。今回の依頼はこの街から鬼を居らんようにする事。居らんようにしたら退治やろが封印やろがどっちでも構わん言われてる。せやからウチは霊玉に浄化加工出来る封印を選んだんや」

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