《MUMEI》

「霊玉?浄化加工??」

「専門用語使われても解らへんか。

 簡単に説明すると、霊玉っていうのは、ウチら退治屋が使う呪具なんかの退魔道具を作る素材のひとつで、浄化加工っていうのは、中身入りの封玉――妖玉って名前に変わるんやけど、こいつをちゃんとした手順で霊玉に磨き上げる事を言うんや。

 いつもやったらある程度どつき回してから封印するさかい、質もイマイチな下の中か、マシな方で中の下程度のモンしか作れやんのやけど、今回はほぼ無傷で封印出来たから、上物の霊玉に加工する事が出来るんちゃうかな」

「上物って、そんなに凄いのか?」

「まぁ、いつものやったら五百万から一千万クラスが関の山やけど、こいつが霊玉に加工出来たら、最低でも三千万とか四千万位になるんとちゃうかな」

「よっ…………!?」

 予想の二歩上を行く答えに次の言葉が出ない。

 四千万って言ったら、うちのオヤジが馬車馬のように10年分間働いた給料とたいして変わらねぇじゃねぇかっ!!

「なんでそんな玉っころに馬鹿みたいな値段が付くんだよ!?」

「何言うてんねん。四千万言うたかてホンマやったら大赤字なんやで。

 今回、街ひとつすっぽり包み込む陣地の形成と、封印結界だけで軽く五千万は飛んでるんやから」

 目ん玉が飛び出すような金額を、まるではした金のように口にする。

「じゃあ何で、わざわざ赤字になるような事やったんだ?」

「必要経費は全部依頼人持ちやから」

「何かずりぃ」

「どうせ自分の金ちゃうからて、ドブん中に捨てるような金の使い方しか出来ひん連中が出す金や。別にかまへんて」

「誰だよ、そいつらは」

「それは守秘義務があるさかいに言えへん」

「いいけどさ、別に…………。

 それにしてもそんな玉っころが四千万ねぇ…………」

 麗がジャケットのポケットに妖玉だかヨーデルだかをしまい込むのを見ながら呟く。どんなに目を凝らしてもただの色付きのガラス玉にしか見えない。中の青い色が透き通っていたならまだいくらか綺麗に見えるんだろうが…………。

 ん……?あお?青色??

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