《MUMEI》

 先に動いたのは麗だ。

「雷っ!」

 気合いを込めて放つ札がバリバリと光を撒き散らす稲妻に変わり、目の前の敵に襲い掛かる。

 鬼は膝を曲げ僅かに身体を沈めると、その巨体とは裏腹な俊敏な身のこなしで頭上へ飛び上がる。

 稲妻が鬼の居なくなった空間をイオン化して奥の壁にぶち当たると跡形もなく霧散した。

 頭上に飛び上がった鬼は身体を捻り天井に着地すると、足の筋肉を極限に収縮させ、天井を蹴破った反発力と重力の力を合わせて麗に向かって落下する。


 ドゴンッッ!!


「麗っっ!」

 砕けた天井からは瓦礫が降り、床にはぽっかり穴が開く。いくつもの跳ねた小石が近くにいた俺に向かって飛んで来る。

「イテ、イテテ……」

「何をやっとるんやアンタは!」

 小石と格闘している俺の襟首を聞き慣れた声の主が引っ付かんだ。

「麗っ!?無事だったのか!?」

「当たり前やろ。そんな事より場所変えるで」

「逃げるのか?」

「ちゃうっ!体制整えるだけや。置いてかれたなかったら早よ立ちぃ!」

「うわっ!?ちょ、ちょっと待てよっ」

 片腕捕まれ急かされて、立ち上がった俺は麗の背中を追い掛けてロビーの出口に向かって走りかけた。


 ダガンッッッ!!


 直下型地震のように床が縦に揺れたかと思えば、出口前がガラガラと崩落し初める。

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