《MUMEI》

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 チョロ……チョロチョロ……ジョロロロロッ


 放物線を描いて下へ下へと落ちて行く黄金色した小便が、途中、風に吹かれて広がっていく。

 しかし、高い所からする立ち小便ってのは、どうしてこうも気持ち良いんだろうか。

「ふぃ〜〜…………」

 パンパンになっていたタンクを空にした俺は、身体をひとつ震わせてから雫を振って切ると、いくぶんクタッとなった俺様自身を仕舞い込む。

 一仕事終えて、ふと視線を上げると、赤い壁が視界いっぱいに広がっていた。

「ッッッ!!!!」

「タクヤ伏せっ!!雷っっ!!」

 ほとんど脊髄反射で床に突っ伏す。バリバリバリッと、けたたましい音が通り過ぎるのが背中越しに伝わってくる。髪の毛から背中の毛から、うぶ毛の一本にいたるまで後ろに引っ張られていく。

「タクヤこっちや!早く!!」

 その声が合図になって、ビーチフラッグのスタートの要領でダッシュする。途中、視線をさ迷わせ赤い壁の主を探すが影も形も無くなっている。

「麗っ!鬼は?」

「解らん、気配消しよった!」

 周囲に注意深くセンサーを張り巡らせる麗の側でキョロキョロと辺りを窺う。

 シン――ッと冷たい静寂が訪れる。

「下やっ!!」

 麗の声と足下の床に亀裂が入るのがほぼ同時だった。

 真逆に飛び退く俺と麗を追い掛けるように床が弾け、飛び散る瓦礫が腹や胸、顔を庇った腕や足に襲い掛かる。

「雷っ!」

 麗が放った札が雷に変わり、床から生える丸太のような赤い腕に向かって飛ぶが、着弾寸前で腕は引っ込み、雷は暗く口を開く穴の縁を僅かに焦がす程度に終わった。

「ちぃっ」

 苛立ちの舌打ちが粉っぽい空気を伝って聞こえてくる。

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