《MUMEI》

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 ふしゅぅぅぅぅぅ………………


 闇の中から滲み出るように、恐怖に凍り付く俺の前に鬼が姿を現す。吐き出した白い息の生ゴミのような臭いが鼻をつく。

 鬼の口許が、ガタガタ震える俺の姿にニタリと歪む。

 一歩。野太い足がこっちに踏み出す。

 麗は瓦礫の山からまだ起き上がらない。

 身体の震えが止まらない。

 血の気が引いて立っていられない。

 後退りしようとして瓦礫につまずき尻餅をつく。

 と、硬いものが腰を押すのに気付いた。

 迷わずそれを引き抜くと両手で持ち、鬼に向けて構える。

 黒鉄の頑強なフォルム。ズンと伸びた銃口を鬼の顔面に合わせる。そして、指を掛けたトリガーをグリップへと押し付けるように引いた。

 鬼がまた一歩、俺との距離を詰める。

 何でっ!?何でだっっ??

 もう一度引き金に掛けた指に力を込めるが、やはり銃は火を吹かない。

 まさか弾切れっ!?

 そんなはずない!M500の装填数は5。残り3発はあるはずだ。

 大慌てで拳銃を確認すると安全装置が解除されてないだけだった。

 うっわ。俺って間抜け。

 ホッとする暇すら無く、すぐさま安全装置を外して狙いもそこそこに鬼に銃口を向ける。迷わず引き金を引いた。


 ガゥンッッ


「うわっっ!」

 撃鉄が薬莢を弾いた瞬間、想像遥かに上回る衝撃が手首を、肘を、肩を襲う。

 薬莢が炎を噴き上げ銃口から吐き出された鉛弾は、見事なまでに目の前の鬼から反れて柱の一角を粉々に破壊すると、それを撃ち出したM500は俺の手から弾かれて、弧を描きながら後ろへ飛んでいった。

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