《MUMEI》

 息が詰まる。麗に向けたモノと同等かそれ以上の殺気を俺なんかにぶつけてきてやがった。

 逃げるどころか立ち上がる事も出来ない俺は、肘と足を使って何とか後ろへ下がるが、到底鬼の歩みに敵うはずもない。

 捕まれば確実にミンチにされる!

 麗の方を見やるが瓦礫の中からいまだ動く気配は無い。ひょっとして死んじまったのか?それとも死んだふりか?まさかまた俺を囮に使うつもりじゃねぇだろうな?

 ヤバい!呼吸がままならないせいで、そろそろ本気で酸素が足りなくなってきた。目が霞んで頭も朦朧とする。

 何とか助かる方法はないか。助かる方法…………。

 と、足下に見覚えのある玉が転がっているのに気が付いた。青い色を放つ野球のボール位のガラス玉――確か霊玉だか妖玉だか言ってたやつだ。

 その時、俺の頭にある考えが浮かび、その玉を拾い上げる。

 玉に触れた瞬間、形容し難い不快感が背筋を這い上がる。元が元だけに仕方ない事かもしれない。

 多少の気持ち悪さはぐっと堪えて、手にした玉を突き付けた。

 相変わらず気持ち悪い位淀んだ青い色をしていて、時折苦痛にのたうつ鬼の顔が現れては消え失せる。

 ただそれだけで他には何も起こりそうにない。

 何かの素材に使うって言ってたけど、やっぱりこれ単体だと何の力も無いのか。

「くそっ!役に立たねぇなぁ、もうっ!!」

 うんともすんとも言わない玉っころを床に叩き付ける。

 その時だ――。

.

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫