《MUMEI》

 割れたかと思わせる程の甲高い音がしたかと思ったら、玉の中からカラー煙幕のような青い煙が吹き出す。

 その煙が生きているかのようにひとつ所に固まり、俺の身体をスッポリと包み込んだ。

「ゲホッ、ゲホッ……何だこりゃ!?ゲェッホォッ……」

 煙が目や鼻や口、耳にまで潜り込んでくる。全身が内と外からチリチリと灼かれるように痛み始めた。

「痛い熱い痛い熱い痛い熱い熱い熱いアツいぃっっ!!!!」

 身体の奥に熱がこもる。いや、身体の奥から熱い何かが込み上がってきた。

「アツいっっ!!!!!!」

 脳ミソが溶けて沸き立ってるんじゃないかと思える位熱い。頭がぼぅっとする。視界が陽炎のようにゆわんゆわんに揺らめく。

「アツいっっ!!!!!!!!」

 立ち上がった身体が鉛のように重い。空気が水溶き片栗粉のように身体にまとわりつく。


「ア゛ツ゛イ゛ィィィッッッ!!!!!!!!!!」


 俺の中で膨れ上がるイライラを、目の前の鬼に全てぶちまける。


 がぁぁぁっっ!!!!


 鬼が上げた拳を降り下ろす。そのひどくゆっくりした動きは、避けるのにたいした労力を必要とせず、懐に潜り込んだ俺は、突き出した手で鋼のような脇腹を引き千切った。


 ぐぉああああぉぉおおっっっ!!!!


 鬼の苦悶の咆哮を背中越しに聞く。

 あれ?何で俺、こんなコト出来るんだ?

 足がもつれて倒れるように転ぶ。立ち上がろうとするが身体が思うように動かせない。

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