《MUMEI》

.

「るぅぁああっっ!!」


 それを下から突き上げた頭突きで対抗する。


 ガチンッッ


 鋼同士をぶつけたような音が響き渡り、頭突きが鉄槌の軌道を逸らせた。


「るぉあぁぁあああっっっ!!」


 気声を上げ、突き入れた両手に力を込めると、


 メリ――――ッ
 メリメリメリメリメリメリメリメリッッ


 分厚い筋肉で覆った脇腹を力任せに引き裂いた。


 ぐおおおぉぉぉおおぉあぁああっっ


 鬼の絶叫が空気を震わせ、天地を貫く。

 赤とも黒とも付かない血を盛大に撒き散らしながら、押さえきれない位に拡がった傷口を押さえて鬼が、旨味な餌か、替えの利く玩具程度にしか考えていなかった俺から逃げ出す。

 それをもはや俺の身体とは呼べない、頭からべっとりと返り血に濡れた俺の身体が追い掛けた。

 前でよろめく鬼の白髪をひっ掴み、反り返った背中に馬乗りに飛び乗ると、大きく開いた傷口に手刀を突き立てる。薄いが弾力のある腹膜が裂けて腹腸が吹き出す。


 がぁぁあぁっっ!!


 まだまだ苦痛の叫びに余力が感じられる。

 床に突っ伏し、腹腸を周囲にぶちまけながらも、それでもなお逃げ出そうと足掻く。


「かぁあああぁぁあっっ!!」


 俺の身体がそれを赦さない。弛緩した筋肉を引き裂き、骨を砕き、臓物を抉り出す。そして引き千切った、手に収まりきらない大きさの血の滴る心臓を、獣のように貪り喰らう。

 もういいだろ。もう十分だろ。もうこれ以上俺の身体を汚さないでくれよ…………。

 鬼は腹腸の大半を引きずり出され、時折、力無く痙攣を繰り返す。さすがにここまで解体されては生きていないだろう。


「ぅるあああああああぁぁぁ…………」


 その無惨な亡骸を踏みつけて、俺の身体は勝鬨を上げる。

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