《MUMEI》
痛手
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藤川という先輩と付き合い始めてから、風子の雰囲気が、何となく変わった気がした。

相変わらず、明るくみんなと接しているが、いつもどこか上の空で、特にひとりになると、教室の片隅でぼんやりと空を眺めている姿を度々見かけるようになった。

それでも、男と付き合うようになると、女はそんなふうになるのかな、と俺は取り立てて気に留めていなかったのだが、

長い夏休みが明け、新学期が始まった頃のある日、

晶子の話を聞いたとき、その真相を知ることとなった。


「藤川先輩と、うまくいってないんじゃないかな」


その日、風子は風邪か何かで学校を休み、俺と晶子でいつものように屋上でたむろしていたとき、晶子が、ポツンと呟いた。

「なんだよ、急に」

俺が笑いながら尋ねると、晶子はいつになく神妙な顔をして、「実は…」と言いにくそうに語り始めた。


少し前の週末、晶子が彼氏とデートしていたとき、藤川先輩を街で目撃したらしい。

そのとき、先輩には連れがひとりいたらしいが、それは風子ではなく、見知らぬ女の子だったそうだ。

「もしかして、先輩、浮気してるんじゃ…」

心配顔の晶子を見て、俺は「まさか!」と笑い飛ばした。

「わからないじゃん。大学の友達とかじゃないの?」

当時、俺にも彼女はいたけれど、こんなふうに晶子や風子と仲良くしているし、きっとその先輩も、同じように遊んでただけだと俺が言うと、晶子は首を横に振った。

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