《MUMEI》

「俺は親父の病名を聞きに来たんだよ!

勝手に話すり替えんな!」


怒りに任せて怒鳴ると、
赤眼鏡でショートヘアーの看護婦さんが、
節目がちに言った。


「あまり聞かない方がいいですよ。」


「それでもいい。」


俺は真っ直ぐに見つめ返した。


「母さんの様子からして何となくヤバいことは分かってるんだ。


とっくに覚悟は出来てる。」


「そうですか。

でもお母様から直接お聞きなさった方がよろしいのでは?」


「ああ、でも多分母さんは親父のことは言わねえよ。

俺に辛い思いをせずに野球に専念出来るよう、
気遣ってるから。」


そこで初めて俯いた。


「俺としては、そっちの方が辛いけどな。」


無理矢理作り笑いを浮かべて、
また看護婦さんたちに顔を向けた。


看護婦さんたちはそんな俺に同情したのか、
ポツリポツリと語り始めた。

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