《MUMEI》
恋の『闇』
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高校を卒業してからしばらくは、俺達3人はそれぞれの新生活に没頭し、それなりに忙しい毎日を過ごしていた。


『卒業しても、時々は時間を作って3人で集まろう』


そう約束はしていたが、実際は難しかった。

俺は今までとは違う慣れない大学生活に戸惑い、晶子は新しく出来た短大の友達との合コンに忙しく、風子は専門学校から出される膨大な課題に追われていた。


ようやく会えたとしても、誰かひとり欠けていたりして、なかなか3人全員が集まることなどなかった。


確か、あの時も、風子が学校のイベントか何かで来られなくて、

俺と晶子の二人だけで、地元の居酒屋にやって来ていた。


「やっぱり、ヤバいと思う」


酒がすすみ、少し気分が良くなってきた頃、晶子が唐突に言ってきた。

何のことかと思ったら、藤川先輩の話だった。

なんでも、晶子の友達が先輩と同じ大学に進学したらしく、そこで彼に関する噂を耳にしたというのだ。

「とっかえひっかえ女を作ってるらしいの。ちょっと気になる子がいたら、すぐ手を出すとか…全然良い噂聞かないって言ってたよ」

晶子の心配そうな声に、俺は曖昧に唸った。

『手を出す』っていうのが、どの程度のものなのか、判断しかねたからだ。

黙り込む俺に、晶子は俯き、続けた。

「考えてみたら、藤川先輩って高校の頃からモテてたよね。カッコいいし、派手だから何となく判るけど…」

そこまで呟き、晶子は俺の顔を見た。

「風子、大丈夫かな?また独りで抱え込んでるんじゃないのかな?」

彼女の切羽詰まったような言葉に、俺は「判らないよ」と、肩を竦めた。

「風子からは何も聞いてないし、だいたいそんなこと、俺達が首を突っ込む権利ないだろ?」

本気でそう思っていた。

風子が自ら相談してきたなら話は別だが、彼女から何も話を聞いてない内に、ああでもないこうでもないと独り善がりに考えを膨らませるのは、全く以て建設的ではないと思った。


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