《MUMEI》 . 「とにかく、風子から何らかのアクションがないと、俺達には何も出来ないよ」 諭すような俺の言葉にも、晶子はどうしても納得いかなかったようだ。 彼女は額に手を当てて、「もうひとつ、気になることを聞いたの…」と、呻くように呟いた。 「藤川先輩、ちょっとヤバいって…なんか、女の子に色々エグいことやってるって」 その台詞に、俺は眉をひそめた。 「…『エグいこと』?」 「なんだよ、それ?」と尋ねると、晶子は何かを振り払うように頭を振った。 「…判らない。でも、なんだかイヤな予感がするの…その話を聞いてからずっと、胸騒ぎがして…」 不安そうな晶子の声を聞きながら、俺はため息をついた。 その頃俺は、ライフスタイルの変化により、高校の頃から付き合っていた彼女とすれ違いが続き、破局寸前だった。 だから、ハッキリ言って他人の色恋沙汰に呑気に関わるような、気持ちに余裕を持てないでいた。 俺は晶子に何も答えず、気を紛らわせようと、豪快に酒を煽った。 卒業して以来、初めて3人全員が集まることが出来たのは、秋も終わりに近づいた頃だった。 みんなそれぞれに新しい生活にも慣れて、心に余裕が出来たのか、何とも和やかなムードで飲み会をしていた。 晶子は前にも会っていたし、相変わらず派手な化粧をしていて、昔とちっとも変わらなかったが、 風子は、雰囲気がガラリと変わっていた。 長く伸ばした髪の毛を明るい茶色に染めて、緩いパーマもかけていた。服装も少し派手なものを身に纏っていたので、高校の頃のような清楚な感じはなくなっていた。 そして何より、 かなり痩せたように感じた。 . 前へ |次へ |
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