《MUMEI》 . 元々細身ではあったけれど、前は健康的な体つきで、それが彼女の美しさをより引き立たせていたのだが、 何というか、この時会った風子は、異常なくらいガリガリで、腕などはほとんど枯れ枝のようで、まさに骨と皮だった。 「ちゃんと食べてるの?」 風子の姿を見兼ねた晶子が、そう尋ねると、彼女は微笑み、「そこそこね」と柔らかく答えた。 その眩しい笑顔と抑揚は、以前と変わらぬものだった。 取り敢えずは、風子のことをとやかく突っ込むのは止めにして、俺達はそれぞれの近況を報告しあった。 晶子は彼氏と別れて、合コンで知り合った男と付き合い始めたと言い、俺は大学のバスケサークルで出会った仲間達とのバカ話をした。 風子はと言えば、 俺達が繰り広げる下らない話を、優しい微笑みを湛えながら、ただ静かに聞き入っているだけで、自分の話をしようとしなかった。 「風子は?最近どう?楽しんでる?」 明るい声で尋ねた晶子に、風子は少しだけ首を傾けた。 「最近は、ちょっとしんどいかな…」 何かを匂わせるような言い方に、俺と晶子は眉をひそめた。 「何かあったの?」 俺が尋ねると、風子は悲しげに笑い、 そして、消え入りそうな声で、答えた。 「また、捨てられちゃった…」 軽快な言葉遣いとは裏腹に、 その台詞には、のし掛かるような重みを感じた。 俺と晶子が黙っていると、風子は軽やかに笑う。 「急に音信不通になっちゃったの。もう何度目になるのかな…いい加減、慣れたけどね」 その笑顔が、ひどく痛々しく思った。 . 前へ |次へ |
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