《MUMEI》

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風子の話では、藤川先輩はかなり女癖が悪いらしく、彼女が把握しているだけでも、常に3、4人は他に女がいたそうだ。

「気になる女の子が出来ると、わたしのことは完全にシャットアウト。電話もメールも全部無視されて、話し合いの余地もないの」

風子の言葉に晶子は眉をつり上げて、「なにそれっ!?」といきり立った。

「カンペキ、バカにしてんじゃん!ひどすぎる!!」

俺も晶子に同意した。平気でひとを裏切るようなヤツはロクな人間ではない。

藤川先輩を非難し始めた俺達に、風子は少し慌てて、「でもね!」と言葉を補った。

「しばらく放っとかれるんだけど、3か月くらい経つと、また戻って来てくれるんだよ。いつも最後には、わたしのことを選んでくれるの」

俺と晶子は眉をひそめた。風子の言い方に、何か引っ掛かるものを感じた。


『戻って来てくれる』


『選んでくれる』


明らかに風子と藤川先輩の力関係が、対等ではないということが判った。


恋愛に於いては、人は平等な筈だ。

一方が権力を行使して、もう片方はそれに付随するのでは、それはもはや恋愛ではなく、単なる支配に過ぎない。

そして、風子は、

完全に藤川先輩の支配下に置かれていた。
本人の自覚のない内に。


…間違ってる。


俺は言い様のない苛立ちを覚えた。それは、良心の呵責もなく人を傷つける藤川先輩に対してなのか、それとも、そんなバカな男に見下されていることに全く気づいていない風子に対してなのか、よく判らなかった。


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