《MUMEI》 「匿って!」 内館はアルバイトで忙しいのだが、時折サークルに顔を出す。 「波岡さん?」 内館には熱心な追っかけがいるのだ。 「お話くらいしてあげたらどう?浪岡さん可愛らしいじゃない。」 やんわりと木下君は笑った。 「浪岡さんみたいなのがタイプなんだ。」 「まさかあ、内館と俺じゃあ彼女の比較対象にもならないよ。」 まんざらでもない彼の反応に何故かイラッとしていた。 「私の前では飄々としてるくせに、女性の前では弱々しいんだね。」 「そりゃあ、天下の美作のような経験は無いし。」 天下ってなんだ……。 「恋愛関係で不自由ないだろうな。」 内館までなんだよ。 「不自由も何も欲していないし、許婚がいるから。」 「ちょっとそれ、初めて聞いたんすけど。」 内館が急に食いついてきた。 「許婚って都市伝説かと思ってた。つまり、美作は伝説の男。」 木下君の真顔で言う冗談が怖い。 「自分で探すよりは断然楽だ。」 興味が湧かないものって全部同じに見えるから。 「……刺されそうだな、いけね。時間だ。」 内館が窓からでてった。相変わらず豪快な奴だ。 前へ |次へ |
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