《MUMEI》

そして翌日。

小雨が降る中、近所のお寺でお葬式は始まりました。

女の子のご両親は泣きながら、訪問者達に頭を下げます。

わたしも親族席に座りながら、女の子の遺影を見つめます。

明るく、わたしにも懐いていた可愛いコです。

いなくなったことが…今でも信じられません。

…ストーカーのことは、何となく感じていました。

けれど警察の人がいるし、学校のみんなもいるから、と明るく振る舞っていました。

その本心を、見抜けなかった自分が情けないです。

女の子は殺される時、どんなに怖かったでしょう?

どんなにさびしかったでしょう?

最期に何を思い描き、何を感じたのか…もう聞く手段はありません。

…やがて人気が途絶えた時、数人の人がまとまってきました。

しかし雰囲気がおかしく、わたしは隣の母の顔を窺いました。

「…犯人と、刑事さん達、そして犯人のご家族よ」

犯人と思しき青年は、見た目は普通の青年でした。

少し大人しめの…人殺しだとは思えないぐらいの青年です。

けれどその顔は平然としていました。

自分が犯した罪を、アレは理解していない顔です。

「このたびは本当にっ…!」

大きな声に視線を向けると、女の子のご両親に、青年のご両親が土下座をしていました。

けれど2人は顔をそむけ、何にも言えずにいました。

「本当に、すみませんでした」

付き添っていた3人の刑事さん達も、悲しみの表情で頭を下げます。

けれどもう…遅いのです。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫